暑い夏を少しでも涼しく過ごしたい。そんなことを思っていると、ふとあるものを思い出した。「油団」と書いて「ゆとん」。和室の畳の上に敷く、和紙でできた夏専用の敷物で、夏の季語にもなっている。聞けば、その製造元が日本でただ一つ、福井県鯖江市にあるというので訪ねてみた。
鯖江の市街地の西郊、田園のなかの集落に老舗表具店「紅屋紅陽堂」があった。
「どうぞ触ってみてください」
4代目牧野由尚さん(46)が、在庫としてもっている1畳サイズの油団を取り出した。つるりとした表面に触ると、手にひんやりとした感触が伝わる。
「表面に塗られたエゴマ油が体温を和紙に逃がすという説や、油が水をはじくため肌の水分をはじく際に気化熱を奪うという説がありますが、明確には分かっていません」と牧野さん。
現代の猛暑には油団だけでは過ごしにくいが、緩めにエアコンを入れれば、じゅうぶん涼しさが感じられるという。
この油団、つくるのに大層な手間暇がかかる。
1畳あたり15万円~も納得 和紙をたたく驚異の回数
まず楮(こうぞ)100%の…