イスラム過激派による襲撃事件が起きたフランスの週刊紙「シャルリー・エブド」の旧本社の建物入り口に描かれた似顔絵の下に、花束が置かれていた=2025年1月6日、パリ、宋光祐撮影

 イスラム教の預言者の風刺画を掲載したパリの週刊紙「シャルリー・エブド」の襲撃事件から7日で10年を迎えた。節目に合わせて、フランスでは表現の自由を訴える声が高まった一方、テロの恐怖は消えていない。イスラム系住民に対する差別も根強く、仏社会は事件後に深まった分断を克服できずにいる。

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 2015年1月7日、イスラム過激派の兄弟2人はパリ市内の同紙編集部に押し入り、編集者や風刺画家ら12人を殺害した。10年後のこの日、当時編集部が入っていた建物の前で開かれた追悼式典に合わせて、事件で風刺画家の父ジョルジュ・ヴォランスキさん(当時80)を失ったフレデリカさんは初めて現場に足を運んだ。

 振り返れば、編集部の同僚たちは父にとって親友であり、家族のような存在だったと思う。当時、高齢で動くのがつらそうな父の姿を見て「ファクスで作品を送れば」と勧めたが、父は「編集部に行きたい」と譲らなかった。事件が起きたのは、父が毎週楽しみにしていた編集会議の日だった。

 時間とともに事件の記憶が風化し、「私はシャルリー」の合言葉とともに叫ばれた表現の自由を守る大切さも忘れられているように感じてきた。しかし、追悼式典に足を運び、父たちの死を悼む大勢の人を見て勇気をもらった。「フランスに今も『私はシャルリー』の精神があるかは分からない。でも、今日初めて事件の後の現場に来て、楽観的でいようと思えた」

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