ロレッタ・ナポリオーニさん=本人提供

 編み物と社会の歴史をたどるエッセー「編むことは力」が日本でも版を重ねている。その副題は「ひび割れた世界のなかで、私たちの生をつなぎあわせる」だ。国際政治や経済、特にテロリズムの研究で活躍してきたロレッタ・ナポリオーニさんに、なぜいま編み物なのか、オンラインで聞いた。

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 これまで、北朝鮮や「イスラム国」(IS)についての私の本が日本語でも読まれていましたが、今回の編み物についての本が、まったく新しい多くの読者を得ていることをうれしく思っています。

 編み物は幼い頃からずっと、私にとって大切な存在でした。しかし、私の身にある大惨事が起こらなければ、この本を書くのは後回しになっていたでしょう。2019年1月、それまで信頼し長年一緒に暮らしていた夫に裏切られ、すべての資産を引き出されて、一文無しになったのです。

 個人がそんな事態に直面すると、私の知る経済学や政治学といった社会科学だけでは対応できませんでした。頼りにできたのは、6、7歳の時から祖母が教えてくれ、いつも身近にあった編み物だったのです。

 私の祖母はイタリアで190…

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