(ひと)清水市代さん 女性初の日本将棋連盟会長
縁側から庭を眺める。
花弁の上を伝うテントウムシを見つめる。
一歩ずつ登って端まで達してから立ち止まる姿に、ふと思った。
君も私みたいだな、と。
1996年、27歳で女流全冠を独占した直後だった。
叶(かな)えたい夢を全て手にすると、残されたのは空虚な日々だった。
数秒後、小さな生命は華奢(きゃしゃ)な羽を広げて飛び立った。
「当たり前のことなのに、なぜか涙が出て」
今でも時々思う。道を失ったら飛べばいいのだ。
おてんばだった小学5年の時、高鉄棒からの着地に失敗して右手を骨折。やむを得ず、父の好きな将棋を本格的に始めてみた。
すぐ夢中になった。
考えることは何時間でも平気だった。
女流棋士になると両親に告げ、反対されると「てっぺん取るから」と説得した。
16歳でプロになった…