Smiley face

(ひと)清水市代さん 女性初の日本将棋連盟会長

 縁側から庭を眺める。

 花弁の上を伝うテントウムシを見つめる。

 一歩ずつ登って端まで達してから立ち止まる姿に、ふと思った。

 君も私みたいだな、と。

 1996年、27歳で女流全冠を独占した直後だった。

 叶(かな)えたい夢を全て手にすると、残されたのは空虚な日々だった。

 数秒後、小さな生命は華奢(きゃしゃ)な羽を広げて飛び立った。

 「当たり前のことなのに、なぜか涙が出て」

 今でも時々思う。道を失ったら飛べばいいのだ。

写真・図版
日本将棋連盟会長・清水市代さん。将棋会館のロビーを埋め尽くした就任祝いのコチョウランの前で=6月24日午後、東京都渋谷区、北野新太撮影

 おてんばだった小学5年の時、高鉄棒からの着地に失敗して右手を骨折。やむを得ず、父の好きな将棋を本格的に始めてみた。

 すぐ夢中になった。

 考えることは何時間でも平気だった。

 女流棋士になると両親に告げ、反対されると「てっぺん取るから」と説得した。

 16歳でプロになった…

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