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伊豆大島の「富士見観音」の敷地内に建てられた納骨堂の前に立つ伊藤修さん(左から3人目)や塚本入敦さん(同2人目)ら。日系ブラジル人の遺骨を納められるように宗教法人化について話し合った=2025年6月4日、東京都大島町、平山亜理撮影

現場へ! 老いたデカセギ日系人(5)

 東京・伊豆大島に「富士見観音」と名づけられた観音堂がある。日本から南米に移住し、志半ばで亡くなった人たちを供養するため、半世紀近く前に建てられた。いつか日本に戻り、再び富士山を見たい――。そんな思いをくんで命名されたという。

 この観音のそばに2024年9月、納骨堂ができた。ブラジルなどからデカセギで来日し、亡くなった日系人らの遺骨を納めるため、横浜市に住む建築作業員で彫刻家、僧侶でもある伊藤修さん(74)らが建てた。伊藤さんにとって、移民の境遇は人ごとではなかった。1982年から10年間、アマゾンに住んでいた経験があり、現地でよく苦労話を聞いていたためだ。

 「良い暮らしができると言われてきたのに電気もガスも水道もない。だまされた」。そんなつらい思いをしながらもたくましく生き抜き、無縁仏になった日系人らの魂を慰めようと、月1度は伊豆大島を訪れ、手入れをした。

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伊豆大島にある「富士見観音」は、ブラジルで無念に死んでいった日本人の移民たちの魂を慰めるために建立された=2025年6月4日、東京都大島町、平山亜理撮影

「子孫までも無縁仏に……」

 さらには、ブラジルからデカセギで来日した日系ブラジル人も年齢を重ねて亡くなり、遺骨を納める場所がなく、困っているとも聞いた。「子孫までも、無縁仏になっているとは……」と驚いた。

 日系ブラジル人の塚本入敦(…

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