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 2025年春夏シーズンの東京ファッションウィーク(楽天ファッションウィーク東京)が2~7日の6日間、渋谷区を中心に開かれ、33ブランドが公式参加した。物語性に富む内省的なコンセプトや、ショーの形式を拡張するような試み。ファッションデザインを世に問う方法が多様化するなか、それぞれの表現を模索している。

写真・図版
アンリアレイジ・オム=ブランド提供

内面に迫るデザイン

 ベテラン勢から若手まで、服を通じてデザイナー個人の内面を掘り下げる表現が目立った。象徴的だったのは、アンリアレイジのメンズラインとして2シーズン目を迎えたアンリアレイジ・オム(森永邦彦)。「原風景」というテーマのもと、レトロゲームを思わせるドット絵をニットの編み目で表現し、少年の未熟な心を優しい色づかいでセンチメンタルに描いた。

 シンヤコヅカ(小塚信哉)はシーズンごとに描き上げる一枚の絵を服作りの起点としてきたが、今回は学生時代に制作した絵本を主題に、より重層的な物語をデザインに落とし込んだ。ヴィヴィアーノ(ヴィヴィアーノ・スー)は植物に愛情を注いで育てることと服作りを重ね合わせ、8色の異なる緑のチュールを花の形に重ねたドレスで、木々や葉のグラデーションを表現した。

 「粋な目立ちたがり屋」とのブランドコンセプトを掲げてデビューショーをしたマーカス・コビントン(市川マーカス知利)は、メタリックに光る生地やメッシュ素材とレースを掛け合わせ、カジュアルとラグジュアリーの融合を演出した。「黒人と日本人のハーフ」という市川は、「見た目で良くない目立ち方をするのではなく、洗練されたおしゃれな目立ち方を服を通してしたかった」のだと話す。

 男らしさに憧れる少年の自意…

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