国会議員への高額な住宅手当をきっかけに、大規模デモへと発展したインドネシア。国内に渦巻く厳しい雇用情勢への不満や、警察への根強い不信感が一気に噴出した。プラボウォ大統領はデモの鎮圧に軍を動員しており、強硬な姿勢を続ければ、約30年続いてきたインドネシアの民主化の進展に禍根を残しそうだ。
ジャカルタ中心部の大通りから一歩入った裏通り。古い家屋が密集する横丁に、はみだすほど多くの花輪が並んでいる。故人に哀悼(あいとう)の意を示す「カランガン・ブンガ」だ。デモの最初の犠牲者となったバイクタクシー運転手、アファン・クルニアワンさん(21)に手向けられたものだった。
- 【これまでの経緯】国会議員の住宅手当、最低賃金の10倍 インドネシアで市民がデモ
8月28日夜、アファンさんは配達中、警察車両にひかれて亡くなった。
その日、国会議事堂の周辺では市民の抗議デモが開かれていた。首都圏の年間最低賃金の約10倍にあたる年間6億ルピア(約540万円)の住宅手当が国会議員に支給されていることが明らかになり、反発した市民が集結。25日以降、大規模デモが続き、この日も警察が警戒にあたっていた。
「母親の故郷に家を建てるために仕事に打ち込んでいた」。友人のファジリヤンさん(24)は沈痛な表情を浮かべる。
アファンさんのバイクがとめられた自宅で、母親は涙に暮れていた。「決して、もう二度とこんなことが起きてほしくない」。あとは言葉にならなかった。
業界団体によると、アファン…