インタビューに応じるエマニュエル・トッドさん=2025年2月17日、オンライン取材の画面から

 関税を振り回し、ロシアのウクライナ侵攻の停戦交渉にも乗り出した米トランプ政権。だが、ソ連崩壊を予測するなど独自の視点で世界を見つめてきた人類学者のエマニュエル・トッドさんは、そうした威勢の陰で米国は「敗北」しているのだと新著で指摘した。いまの米国と世界を、どう捉えているのか。

 ――ロシアによるウクライナ侵攻の終結に向け、米国とロシアが動き出しています。

 「私たちは世界史の転換点を迎えています。米国はロシアに対して、非常に屈辱的な敗北を経験しつつあります。政治的な世論操作と心理的な作戦によって、まだ明確にそう受け止めていない人も多いかもしれませんが、事実上の敗者は米国です」

 ――当事者であるウクライナも、その他の欧州諸国も蚊帳の外です。

 「これは事実上、ロシアと米国の戦争でしたから、当然ではないでしょうか。米国が主導した経済制裁が失敗し、ロシアは持ちこたえ、同盟国であるドイツなどの欧州の方が(ロシアの天然ガス供給カットなどで)より深く傷つきました」

 「そして2023年のウクライナによる反転攻勢など、米国が支援した軍事作戦が失敗したことが、今日の結果を招いたのです。私は、こうあるべきだとか、何が正義かといった観点からではなく、歴史の視点から語っています」

 ――これでウクライナでの流血は終わりますか。

 「戦争が終わる、と宣言する…

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