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中島京子 お茶うけに

 「小さいおうち」で直木賞、「やさしい猫」で吉川英治文学賞などを受賞した小説家の中島京子さんが、日々の暮らしのなかで感じるさまざまなことをつづる連載エッセーです。

 庭のトマトは毎日5~10個も採れている。ありがたいことである。

 おおむね順調に育っているけれども、実割れには要注意だ。皮を割って果肉が露出したところに、すーっとナメクジさんが吸いつく。でもまあ、よく考えたら、ナメクジだって、おいしいものが食べたいだけなわけで。晴れの日には、お酢ベースのナチュラル系スプレーをしっかり撒(ま)いて、虫と病気の予防をしている。

 3キロ分ほど溜(た)まるとトマトソースを作り、瓶に詰める。楽しい。

 ヘタを取り、おなかでスパンと切って、種をスプーンで取り除き、皮つきのままミキサーにかけ、にんにくの香りを移したたっぷりのオリーブオイルとスパイスを入れて煮詰める。湯剝(む)きするレシピも多いけれど面倒なのでパス。ただし、高齢の母が、トマトの種は入れ歯にひっかかってやっかいだと言うので、種は取っている。これが少し手間ではあるが、一時間半も煮れば、塩も砂糖も入れないのにコクのあるトマトソースが出来上がるのがうれしい。3キロのトマトも、最終的には350ミリリットルの保存瓶3個ほどの量になってしまうのだから、トマトが持っている水分量は相当なものだと思う。

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画・谷山彩子

 そういうわけで、今回はトマトを煮詰めながら考えたことなど。

「トマトの水煮はいくらあっても足りないくらい。大歓迎」

 と、いつだったか、難民支援…

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