人気映画シリーズの最新作「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」が封切られ、ヒットしている。主演は衰え知らずのトム・クルーズ、62歳。2022年には「トップガン マーヴェリック」も大ヒットに導いたスター俳優の魅力を3人の識者が語る。
渡辺祥子・映画評論家「演技派、目指さなかった」
ハリウッドは、少しずつスターを作らなくなりました。特撮やCGによる派手な映画の製作を、スターの育成より優先するようになったことが一因です。2000年代以降は、すっかりスターが現れなくなった。そして、世紀をまたいで今もスターとして君臨し続けているのは、トムだけです。
ジョニー・デップやレオナルド・ディカプリオなど1980~90年代にスターだった男性俳優は、年を取るにつれて演技派を目指すようになりました。一方でトムは自分の魅力を理解したうえで、ファンの心をしっかりつかむことに全力を注いでいるように思います。
魅力とは「そこまでやらなくていい」とさえ思わせる危険なアクションの演技。パリ五輪の閉会式でも屋根から飛び降りました。何でもやる、という気概も、彼をスターの地位にとどめています。
アクション映画の「ミッション:インポッシブル」シリーズは、そんな彼のキャリアの生命線です。ただ最新作は、ここ一番の見せどころが見当たらず、やや散漫な印象を受けました。過去作の印象的なアクション場面がたくさん挿入されている集大成的な作品です。映画を通じて、彼がスターたるゆえんを改めて感じられるかもしれません。
戸田奈津子・映画字幕翻訳者「ポップコーンをほおばって…」
口癖がたくさんあります。例えば「僕は映画そのものだ」「僕は(スター扱いされても)それを当たり前だと受け止めない」「挑戦」……。そうした口癖が示すように、トムは映画に情熱を全力でつぎ込む、中途半端が嫌いな人です。
彼と初めて会ったのは199…