■経済インサイド

 トヨタ自動車グループの源流にあたる豊田自動織機が、上場を廃止することになった。トヨタグループのガバナンス(企業統治)は複雑で、これまでも様々な指摘がされてきた。今回の一手は、投資家からの理解を得られるか。

現在のトヨタグループの創始者である豊田佐吉の胸像

 「志や価値観を共有する新しい株主とともに、より長期の視座で、より迅速な意思決定、より果敢な投資を実行していく」

 豊田織機の伊藤浩一社長は6月3日、トヨタグループによる同社の株式の非公開化、すなわち上場廃止に賛同する理由をこう説明した。

 1926年設立の豊田織機は、トヨタの源流企業として知られる。グループ創始者である豊田佐吉の息子の喜一郎が33年に自動車部を立ち上げ、37年に独立したのが、今のトヨタ自動車だ。

源流ゆえに…グループ各社の株を大量保有

 豊田織機は現在、売り上げの約7割をフォークリフトなどの産業車両が占める。トヨタ車の委託生産を含む自動車事業がそれに続き、祖業の繊維機械は2%ほど。

 非公開化後は、グループで「モノの移動」を担う会社と位置づけ、物流事業を伸ばす方針だ。一方、「自動車産業を生み出したベンチャー精神」を引き継ぎ、電動化や自動化の技術開発に取り組む姿も描く。

 豊田織機は、創業の経緯からグループの「結節点」にもなっている。トヨタをはじめ、デンソー、アイシン、トヨタ紡織といったグループ各社の株式を大量に保有してきた。グループ各社と企業規模が逆転してもなお、この構図は変わらなかった。

 もし、豊田織機の株が意図せぬ相手に大量保有されれば、トヨタをはじめグループ各社の経営を左右しかねない。2000年代はじめ、グループ各社が株の持ち合いを強め、豊田織機の買収を防ぐ対策を立てた。

 ところが、これが豊田織機の資本効率を悪化させていると、投資家の批判を招いた。

約束された「万が一の時」の対応

 今年3月末時点で、同社の自…

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