現場へ! 巣立ちを支える(4)
「朝、おみそ汁の香りで目覚めてほしいんです」
千葉県一宮町にある児童養護施設「一宮学園」の副施設長、山口修平さん(47)が4月、事務所とは別の場所に6年前にできた地域小規模児童養護施設を案内してくれた。子どもたちが抱えるトラウマを意識した建物にしているという。
地域社会で育てようと、住宅街の中にある。男子と女子の施設を「二世帯住宅」のように隣接させた木造2階建てで、小学生から高校生の男女各6人が暮らす。入り口も内部も男女別の構造だ。カウンターキッチンの窓の大きさは、子どもが居るのは分かっても、見えすぎないようになっている。「設計段階で、窓から見える範囲を試行錯誤したんです」
体も心も満たされる食事
ダイニングとリビングは吹き抜けになっていて、料理の香りは2階にも届く。物が少なく片付けられている。玄関やテーブルには毎日必ず、季節の生花を飾る。この日、女子の施設では、職員の女性が分けてもらったタケノコの下ゆでをしていた。
体も心も満たされるちゃんとした食事を与えられず、掃除もされず雑然とした、快適とは言えない環境で生きてきた子どもたち。心的外傷後ストレス症(PTSD)の症状の一つで、トラウマを体験したときを想起させることに出合うと、怖い体験を思い出してしまうことがある。
トラウマを再体験しないよう、おいしい匂い、片付いて、静かで穏やかな部屋――。安心・安全な暮らしや生活環境を五感に訴え、子どもたちが「育ち直し」をする試みだ。
きっかけは、約20年前にさ…