東京電力福島第一原発事故の旧経営陣の責任を問う株主代表訴訟の控訴審判決が6日にあり、東京高裁は株主側の請求を棄却した。訴訟では、原発を持つ事業者の安全意識が問われた。

 事故から14年超。東電は柏崎刈羽6、7号機(新潟県)の再稼働を急ぐが、この間、改善したはずの安全意識が疑問視される事態も相次いだ。

 「経営トップである私が先頭に立ち、現場と一緒に経営が一枚岩になって取り組んでいる」

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 5月に都内であった記者会見で、東電の小早川智明社長はそう強調した。事故後、安全に対する意識や組織の風通しがどう変わったのかとの質問に答えたものだ。

 やりとりの背景には、東電が事故後も、原発事業者としての信頼を損なう行為を繰り返してきたことがある。

 17年2月には柏崎刈羽原発の重要施設の耐震性不足が判明。事前に問題を把握していながら社内共有ができていなかったことで原子力規制委員会への報告が遅れた。

 さらに21年1月以降、社員が他人のIDカードで柏崎刈羽原発の中央制御室に不正に入ったり、侵入検知設備が故障で機能していなかったりしていたことが次々に発覚。原子力規制委員会が核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令(23年12月に解除)を出す事態を招いた。

 東電は13年、事故を起こした要因について「安全は既に確立されたものと思いこみ、稼働率などを重要な経営課題と認識した結果、事故の備えが不足した」と分析し、組織改革を進めることをアピールしていた。

柏崎刈羽原発のIDカードの不正使用などの問題について、2021年9月の記者会見で頭を下げる、小林喜光会長(中央)や小早川智明社長(右)ら東京電力幹部=東電ウェブサイトの動画から

 その中で起きたのが、一連の問題だった。21年の社外委員からなる独立検証委員会の報告書は「風通しの悪さ(正直に物を言えない風土)がなお残存していることがうかがえた」と指摘した。

柏崎刈羽原発再稼働に前のめり

 さらに昨年11月から今年1…

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