米ホワイトハウスの大統領執務室で、イメージ図を示しながら次世代戦闘機「F47」について説明するトランプ大統領=2025年3月21日、ニューヨーク・タイムズ

How Elon Musk’s DOGE Cuts Leave a Vacuum That China Can Fill

 トランプ大統領は3月21日、米国で長年議論されてきたステルス性能を持つ次世代戦闘機の開発に着手すると発表し、中国に明確なシグナルを送った。今後10年間、あるいはそれを大幅に上回る長期間にわたって、米国は数百億ドルを費やし、中国の太平洋上での制空能力を封じ込める、というメッセージだ。

 だが、(上空での話はさておき)現実は、そのメッセージとはかなり異なっている。

 政府効率化省[Department of Government Efficiency(DOGE)]が政府全体にわたってさまざまな組織を積極的に解体しているが、その対象には、中国が最も懸念していたり、積極的に破壊しようとしていたりしたものが含まれている。また、イーロン・マスク氏が率いるDOGEによってすでに解体された多くの組織と同様に、そうした組織の機能が失われることによる影響の費用対効果について公表されたデータはない。また、有人戦闘機の役割に劣らぬほど重要と考えられるそれらの組織の機能を、どのように補うかについての議論もない。

 かろうじて維持されている[on life support]政府系機関の機能の一つが、29年の歴史を持つ非営利団体「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」の活動だ。毎週アジアで6千万人がRFAのニュース放送を聴いていると推定され、中国からミャンマーに至るまで、さらには、中国が喧伝(けんでん)する世界観に対抗しようとする米国が苦戦を強いられている太平洋諸島地域全体をカバーしてきた。RFAは3月21日にワシントンの拠点の75人を除く全員を一時帰休させ、放送継続を目指している。同時に、政府支援を受けてきたメディアに対してトランプ政権が援助を打ち切っていることをめぐる訴訟も進行中だ。

 一方、国防総省ではヘグセス国防長官が、同省内部のシンクタンクである「総合評価局[Office of Net Assessment]」を廃止した。国防総省全体の年間予算から見れば、割り当てられていた金額は微々たるものだが、同局は10年から20年後に米国が直面するであろう課題の研究に取り組んできた。例えば、人工知能の新たな能力や自律型兵器[autonomous weapons]、軍需企業にとっての供給網の脆弱(ぜいじゃく)性といった問題などが含まれていた。

 総合評価局は高く評価される存在だった。米ウォールストリート・ジャーナル紙は最近の社説で、同局を「冷戦に勝利した機関(Office that Won the Cold War)」だと表現している。ヘグセス氏は、同局を「国防総省の戦略的優先順位に従って」再構築すると説明しているが、具体的な方針は示していない。同局の真価はそもそも、そうした通常の優先順位に異を唱える点にこそあった。

 国土安全保障省では、サイバー攻撃に対する一連の防衛策が廃止された。中国政府の支援を受けたハッカーたちが近年、かつてない成功を収めているにもかかわらずだ。

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新型戦闘機「F47」の名は、2期目のトランプ氏が第47代大統領であることに由来します。でも、完成するのは、予定通りだとしても10年先のことになります。

 少なくとも当面の間は廃止と…

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