激しさを増す米中競争の行方が、トランプ政権下でますます不透明になっている。両国関係はどこに向かうのか。米国は対中政策をどう深化させてきたのか。国際政治学が専門で、米中関係に詳しい東大東洋文化研究所の佐橋亮教授に聞いた。
――現在の米中関係や国際秩序は、歴史の中でどのような位置づけにあるのでしょう。
「バイデン前政権が米中の競争について『いまが決定的な10年』と強調したことには、私も同意します。科学技術分野や世界の影響力で中国をライバルとみることはトランプ政権にも共通しています」
「トランプ政権下で我々が見ているのは、歴史の『早送り』です。米国の力の相対的な低下や内向き化はいずれにしても避けられなかった。バイデン政権が行ったのは、そうした流れを遅らせる、少なくとも見えづらくすることでした」
「トランプ政権はこれまでの国際秩序が米国への過度な依存に成り立っていると考えています。米国が頼りがいに欠ける存在になれば、欧州など世界各地で軍拡が起き、世界の多極化が進展するでしょう」
――第2次トランプ政権の対中政策をどう見ていますか。
「第2次政権内には対中交渉を重視する派、経済上のタカ派、安全保障上のタカ派がまざっています。政権のなかに様々な顔があり、ときに大胆な政策を実行できる。政権内で調整され、小さくまとまっていたともいえるバイデン政権との大きな違いです」
「トランプ政権の落とし穴は…