ホワイトハウスで2025年4月7日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談したトランプ米大統領=ロイター

 トランプ米大統領は9日、ほぼ全ての国・地域に対して全面発動した「相互関税」について、税率の一部の適用を90日間にわたって停止すると表明した。米国に対して、報復措置を講じていないことが条件。相互関税の最低税率である10%は継続する。同日、自身のSNSに投稿した。

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 相互関税は、ほぼ全ての国・地域に一律に適用する10%の最低税率と、そのうち約60カ国・地域に適用する上乗せ税率から成る。日本には10%の最低税率と14%の上乗せ税率の計24%がかかる計算だったが、このうち上乗せ分の14%分が当面免除されるとみられる。

 トランプ氏は投稿で、75カ国以上が関税措置をめぐる協議を米側に申し入れていると説明。こうした国々が「いかなる形でも米国に対して報復措置をとっていない」ことを踏まえて、上乗せ税率の90日間の一時停止を認める考えを表明した。

 記者団の取材に応じたベッセント財務長官は、関税が9日に実際に発効したことで、トランプ氏が「交渉のための最大の効力を作りだした」と述べた。「主に友好国からの、交渉をしたいという反応に圧倒されている。(各国が)最も良い提案を示すことを期待している」と語った。

 ベッセント氏は当面の具体的な交渉相手として、日本のほかにベトナムや韓国、インドなどアジアの国を複数挙げた。各国の関税や非関税障壁の水準に加え、為替操作や労働・産業補助金も協議の対象になる考えを示した。「これは複雑な交渉で、何十年にもわたって作り出された不均衡がある」と述べた。トランプ氏が交渉に関わるとの見通しも示した。

 一方、トランプ氏はSNSへの投稿で、米国への報復を決めている中国に対しては、税率を125%まで引き上げることも明らかにした。中国には最低税率分を含めて84%を適用していた。中国は同率の84%の報復関税を米国に課すと発表しており、これに対抗した。

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 記者団の取材に応じたトランプ氏は、「私は『もし報復するなら、さらに倍にするぞ』と言った。そして中国が報復したから、私はそうした」と説明。そのうえで「中国は取引をしたがっている。習(近平)主席は誇り高い男で、私は彼をよく知っている。どうやって進めるかを模索中なのだろう」と述べ、いずれ中国も米国との取引に応じるとの見方を示した。

 米中間の関税の掛け合いは、第1次政権の「貿易戦争」と呼ばれた当時の税率をすでにはるかに上回っている。こうした状況が長引けば、両国経済はもちろん、世界経済への悪影響は確実だ。

 相互関税の発表以降、ニューヨーク株式市場では株価が4営業日連続で下落している。トランプ氏は、こうした市場の情勢が今回の判断につながったという見方は否定した。9日は株価は大きく反発しており、「今の市場はとても良い状態だ」と語った。

 相互関税は9日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に全面発動したばかりだった。1日も経たないうちに大幅な方針転換が発表されており、「トランプ関税」をめぐる不確実性は極めて大きい。

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