トランプ前米大統領（78）が再び最高権力を託される。前回の大統領選で敗北してからも選挙結果を受け入れず、この4年間、民主主義の根幹を否定するような身勝手な主張を重ねてきた。四つの刑事事件で起訴され、すでに有罪評決が出たものもある。それでもなお、米国民がトランプ氏を再び選んだ原動力とは、一体何だったのか。
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脳裏に浮かぶのは、7月の共和党全国大会や各地の選挙集会で出会った支持者たちの姿だ。ベーコンの価格倍増を嘆く建設業の男性は、トランプ氏が「物価を下げてくれる」と信じていた。娘を麻薬中毒で亡くしたという別の男性は、トランプ氏が当選すれば「こうした悲劇の再発を防ぐ」と語った。トランプ氏を見て涙を流す白人女性もいた。こうした人々にトランプ氏はまさに「救世主」と映っているのだ。
2016年にトランプ氏を大統領に押し上げたのは、過去数十年間のグローバル化と技術革新の陰で苦境に立ち、「取り残された」「忘れられた」と感じた人々だった。ジェンダーや人種にとらわれない「多様性」を認めようとする潮流の一方で、白人男性やキリスト教徒といったかつての「主流派」の間でも、「自分たちの存在が社会で尊重されていない」との疎外感が蔓延（まんえん）する。彼らの嘆きや不満、そして怒りは、今なお解消されていない。
民主党のバイデン大統領はそ…
