連載 混迷を歩く アメリカ大統領選2024:妊娠中絶編②

2020年1月24日、トランプ米大統領(当時)の演説に際して標語を掲げる中絶反対派の人=ロイター。「最も中絶反対派寄りの大統領」と記されている

 米大統領選に向け、共和党のトランプ前大統領(78)は人工妊娠中絶について多くを語らない。6月27日にあったバイデン大統領(81)とのテレビ討論会でも、「今は(中絶をめぐる判断の主体が)州に戻っている。それが有権者の求めだ」などと述べるにとどめ、どのような中絶規制に賛同するのかといった具体論には触れなかった。

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 トランプ氏は「私は性的暴行や近親相姦(そうかん)を受けた際の(中絶規制の)例外や、母体の保護のための例外に賛同している」とも語った。中絶に対する「絶対的反対」の立場は有権者の反発を招くことを踏まえ、そこからは距離を置く発言だった。

「悲願」実現、守勢に立たされる原因にも

 共和党は1970年代以降、中絶問題を政治的に利用する姿勢を強めた。中絶に反対する保守的なキリスト教徒らの支持を掘り起こすためだった。中絶の権利を憲法上の権利と認めた73年の「ロー対ウェード」判決を塗り替えることも、こうした党の戦略に沿った長年の悲願だった。

 その悲願を実現したのがトラ…

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