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 気候変動対策における1年で最大の交渉機会となる国連気候変動会議(COP29)が11月11日からアゼルバイジャンで始まる。交渉の土台となる科学的知見を提供する国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のジム・スキー議長が朝日新聞のインタビューに応じた。COPでの議論や温室効果ガスの削減目標、科学の役割について語った。

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インタビューに応じたIPCCのジム・スキー議長=2024年10月24日、東京都港区、市野塊撮影

気候変動対策の交渉「言葉遊びではない」

 ――昨年のCOP28では、合意文書に「化石燃料の段階的廃止(phase out)」という強い文言を入れることを島国などが求めましたが、反対もあり、結果的に「化石燃料からの脱却(transition away)」となりました。どう受け止めていますか。

 COP28で実際に合意文書に入ったのは「化石燃料からの脱却」でしたが、私たちは昨年3月の最新の報告書でも非常に近い言葉を使っています。

 ――一つの進歩ではあるのでしょうか。

 そうです。ただ、私たちは単なる言葉遊びをしているわけではありません。報告書が提示しているのは大幅な化石燃料の削減の必要性です。2050年までに化石燃料をどの程度削減すれば(産業革命前からの気温上昇を)1.5度または2度にとどめられるかという具体的な数値を示しています。

 ――これまでの合意文書では、議論の対象とする化石燃料について「排出削減対策がない(unabated)」ものに絞る条件がついています。この文言を入れるべきだと思いますか。

 この「対策がない」という文言も、実はIPCCの報告書を参考にしたもので、私たちのシナリオでも、二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)といった対策済みの化石燃料を使うことは想定しています。例えば、気温上昇を1.5度に抑えるという目標を達成するために、対策がない石炭は完全に排除しなければなりませんが、対策した石炭が入る余地はまだ残っています。

 ――IPCCは「対策がない」の定義を「発電所から排出される温室効果ガスの90%以上を回収する」としていますが、各国の解釈はあいまいです。

 実はいま私たちはCCSの具体的な方法論についての報告書を作成し始めています。各国政府から、CCSによる炭素除去量を推定する方法論の作成を依頼されました。先週も会議をし、作業を進めています。

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インタビューに応じたIPCCのジム・スキー議長=2024年10月24日、東京都港区、市野塊撮影

日本はどうすべきか

 ――日本は石炭などとアンモニアを一緒に燃やす「アンモニア混焼」も「対策済み」とみなしています。

 私たちの定義では、アンモニ…

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