Smiley face
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銃撃を受けた直後、観衆に向かって拳を突き上げるトランプ前米大統領の写真。朝日新聞では7月15日付朝刊の2面に掲載した
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 銃撃され血を流すトランプ前米大統領が、星条旗を背に拳を突き上げる姿をとらえた写真が話題になった。銃撃に屈せず立ち上がった姿が共和党支持者の心を揺さぶり、米国では写真をプリントしたグッズを販売する動きもある。報道写真が社会に及ぼす影響をどう見るか。フォトジャーナリズムに詳しい東京大学大学院教授の今橋映子さんに聞いた。

 この写真は、ある現象が持つ性格を何よりも象徴する「イコン」にもなり得る。もとはキリスト教の聖画から来た言葉だが、報道写真ではいわゆる「決定的瞬間」と人々が感じるような力のあるものを指す。

 また、人類が築き上げてきた優れた映像の記憶に結びつく写真であることも重要だ。だからこそ一つの写真が、見る人に様々なことを想起させる力を持つのである。今回の写真でいえば、やはりドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」やローゼンタール氏の報道写真「硫黄島の星条旗」が重なるだろう。

  • トランプ前大統領銃撃事件 判明している情報

 かつて、インド独立運動の指導者ガンジーが射殺された翌日の葬儀を撮った写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの写真により「非暴力を貫いた政治家が暴力によってこの世から消し去られた」ことが広まり、世界中の人々の怒りを喚起した。イコンとなった写真は、幾万の言葉を費やすよりも強烈な「象徴」として社会を動かし得る力をもつ。

 しかしイコンはいつでも「真…

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