トランプ米大統領の不当な圧力にノーを突きつけるため、職を辞した若手弁護士がいる。

 記者がそれを知ったのは、ネット上で拡散していた一通の辞表を目にしたからだった。

 「この法律事務所を退職することをご報告します」。トランプ政権の圧力に屈して多様性の推進といった理念を取り下げた――。そんな勤務先の姿勢に抗議し、退職を決意した思いがつづられていた。

 弁護士の名はトーマス・シップさん(27)。安定を捨ててでも「抗議の退職」を選んだのはなぜだったのか。彼を訪ねることにした。

意に沿わない相手には圧力をかけ、従わせようとする――。そんなトランプ政権の手法に対し、どう向き合うべきなのか。毅然とした態度を示した、ある若者の選択が注目を集めています。

トーマス・シップさん。弁護士生活のスタートは、マンハッタンの中心部にある法律事務所のオフィスだった=2025年4月17日、ニューヨーク、高野遼撮影

日本で生まれ10歳で移住、気づいた米国の魅力

 ニューヨーク・マンハッタン。ラフなジャンパー姿で待ち合わせ場所に現れたシップさんは、「いまは求職中です」と笑った。

 「実は10歳まで神戸で育ったんですよ。日本語はずいぶん忘れてしまいましたけど」

 日本人の母と米国人の父のも…

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