帝国の幻影~壊れゆく世界秩序~「勢力圏」のはざまで【6】
米国は第2次トランプ政権の下、自ら第2次世界大戦後に築き上げた「リベラルな国際秩序(Liberal International Order)」を壊すような動きを見せてきました。背景に何があり、今後の世界はどうなるのか。バンス米副大統領のブレーンである米ノートルダム大学のパトリック・デニーン教授は、米ロを念頭に「事実上の『帝国』によって、世界が再編成されるだろう」との見方を示します。
――あなたは第1次トランプ政権期の著書「リベラリズムはなぜ失敗したのか」で、戦後秩序を支えたリベラリズム(自由主義)の根源的な欠陥を論じました。
個人の選択を重視するリベラリズムは、成功しすぎたために失敗した。リベラリズムが成り立つには共同体の基盤が必要ですが、「成功」するにつれ、人々は共同体への帰属意識や義務の感覚を失いました。
- 【前回はこちら】トランプ関税が破壊する「リベラルな帝国」 戦後秩序生んだ島にも影
――2023年の著書「体制転換(未邦訳)」では、「腐敗したリベラルな支配階級を平和的に転覆し『ポストリベラル(リベラル後)』の秩序を創造することが必要だ」と訴えています。
欧米のエリート層は個人の自由と選択を重視する姿勢が唯一の正しい生き方だと決めつけ、それに賛同しない大衆に対しても強要してきました。
これに対する問題意識こそ、2月にバンス氏が独ミュンヘン安全保障会議で語った、欧州のエリート批判の本質でした。米国のエリートへの批判でもあります。秩序ときずなを重んじるごく普通の人々に敬意を持つ指導者層が、リベラルなエリート層に取って代わるべきなのです。
「革命」に生存力を与えたバンス氏
――バンス氏との関係を教えてください。
彼が(デニーン氏と同じ)カ…