ロシアによるウクライナへの侵略を巡り、米国とウクライナは30日間の停戦案で合意しました。ロシアのプーチン大統領は「停戦は長期的な平和につながり、危機の根本的な原因を取り除くものでなければならない」と語り、この停戦案に慎重な考えを示しています。旧ソ連に駐在した経験もある西田恒夫・元国連大使は「ロシアはウクライナが受け入れがたい条件を提示するだろう」と予測したうえで、「夏前にもウクライナは本当に厳しい選択を迫られる可能性がある」と語ります。
――米国による和平仲介をどうみていますか。
米国は「仲介者」ではなく、ロシアの側に立って、一緒にウクライナを責め立てています。停戦や和平協議を巡る国際法や国際慣行から外れた動きです。しかし、トランプ米大統領はプーチン氏と同様に「大国が仕切ることは政治的には許される」と考えているのでしょう。2人は今後、ウクライナのゼレンスキー大統領に最大限の圧力をかけて、ウクライナの主張を根こそぎ否定したうえで停戦に持ち込むつもりだとみています。
――プーチン氏はどんな要求をすると思いますか。
非常識とも思えるような過大な要求をした後、少しだけ譲歩するという手法を採るでしょう。それが旧ソ連・ロシアの伝統的な外交手法です。戦後、国際連合への加盟を巡っても、ソ連は当初、共和国構成15カ国の議席も要求しました。米国などが難色を示すと、最終的にはソ連、白ロシア(ベラルーシ)、ウクライナの3議席で「譲歩」して合意しました。この手法は、懲罰的な高関税政策などを展開するトランプ氏の手法とも共通点があるかもしれません。
ロシアが併合宣言しているウクライナ東部・南部4州の占有はもちろん、「キーウを分割してウクライナ地区とロシア地区に分ける」「ゼレンスキー氏の即時退陣」といった突拍子もないことを言い出す可能性も十分あります。
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ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ320人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。
――ゼレンスキー氏はどう対…