厳格な移民対策を訴えるトランプ次期米大統領の就任が迫る中、メキシコとの国境地帯では、トランプ氏の就任前に米国に入ろうとする「駆け込み越境」とみられる動きも起きている。米国を目指す人々は何を感じているのか。現場に向かった。
- トランプ再来の米国は「移民の国」から降りるのか 問われる市民社会
「強制送還のリスクがあることは分かっている。それでも、近々渡るしかないだろう」
11月9日、メキシコ北部シウダフアレスの公園で、炊き出しの列に並んでいたダグラス・マンカーダさん(38)はそう語った。リオグランデ川を隔てた先にある米テキサス州エルパソは、目と鼻の先だ。
4月、母国ホンジュラスの首都テグシガルパを離れた。ギャングが横行する首都では殺人や恐喝が当たり前で「いつ殺されてもおかしくない」。妻子を残して米国入りを目指した。シウダフアレスに着き、米国土安全保障省のアプリを通じて、亡命希望者が合法的に入国するための米当局との面接を申し込んだ。
だが、面接の予約が一向に取れない。この間、バイデン大統領は不法移民の即時送還を可能にする大統領令を発令した。そして11月、面接制度の廃止に言及したこともあるトランプ氏が当選した。
マンカーダさんが不法に越境…