高齢者ら170人が1頭のヤギと暮らす海沿いの集落に記者が通い、いまの日本が抱える課題を見つめます。
周防灘を望む山口県光市室積村の伊保木地区。4月12日の土曜日、地区内の五軒屋集落(自治会)の坂道を、住民が息を切らして上ってきた。
目当ては毎年恒例の花見会。坂の上にある長尾隆さん(75)宅で、6本のソメイヨシノが見頃を迎えた。シートを広げ、テーブルやいすを並べて、宴の準備が始まった。
「ここまで来るの、大変ですいね」「死ぬかと思った」「何遍も休まんゃー」
薄紅色の花びらが舞うなか、自治会長の上岡知雄さん(74)が乾杯の音頭を取った。「今年も花見ができたのう。来年も同じ顔ぶれで集まれるように。頑張りましょう」
光市の最も東の端に位置する五軒屋集落で、花見会が始まったのは20年ほど前。当初は親睦のためだった。
だが、自治会の中に自主防災…