渡辺亮司・米州住友商事ワシントン事務所調査部長

 赤沢亮正経済再生担当相は16日、米政府の関税措置を巡り、トランプ米大統領らとワシントンで会談しました。米州住友商事ワシントン事務所の渡辺亮司調査部長はトランプ政権の関税政策を牽制(けんせい)する役割として三つの要素に注目しています。

記事のポイント

 トランプ関税政策による製造業の国内回帰は不可能と予測したうえで、同政策を牽制する役割として①市場・経済情勢、②議会共和党、③裁判所の三つの要素に注目すると語りました。

 ――16日の日米協議をどう評価しますか。

 「いち早く交渉担当も指名されている点は好ましい展開と言えます。トランプ氏と会談できたことも、交渉の早期妥結が期待できます。対米輸出で大きいのが自動車です。自動車関税は今月3日から施行されていて、悪影響が懸念されます。自動車をすぐに北米生産に切り替えるのは簡単ではありません。トランプ氏が長年、問題視してきた為替や、日本に対する貿易赤字の解消の議論も注目です」

米エール大予算研究所の試算「米国の実行関税率は28%に」

 ――米国ではどのような影響が出ているのでしょうか。

 「米エール大学予算研究所の試算では、米国の実行関税率は28%と1901年以来となる高関税率になります。物価上昇と景気後退(リセッション)入りのリスクがあり、不況にもかかわらず物価が全体的に継続して上がる『スタグフレーション』のリスクも懸念されています」

 「米国民の大半が製造業における米国人の雇用拡大を支持し、トランプ政権は関税政策によって製造業の米国への回帰を目指しています。しかし、多くの専門家は否定的です。サービス産業が中心の米国で、製造業に従事したい国民は少ないのが現状です。高関税政策を導入できたものの、製造業雇用拡大はそもそも実現不可能と見られています」

 ――トランプ氏は不確実性を…

共有
Exit mobile version