蟲神器の虫カード

「100円トレカ蟲神器」(前編)

 「ヘラクレスオオカブトで『神のツノ突進』!」「サシハリアリの『かみつく』!」

 5月中旬の日曜午後。埼玉県三郷市で開かれているトレーディングカードゲームの「公認大会」を訪ねると地元の小学生10人が真剣勝負を楽しんでいた。

 大会に参加した小学6年の黒須朝陽(あさひ)君(11)は「ルールは簡単。虫の絵もかっこいい」と夢中に。小学4年の弟・葵生(あおい)君(9)も「虫について学べるし、大会がたくさんあって、強くなれて楽しい」と話す。

 会場は、駅からほど近い貸会議室の一室。参加者は保護者を含め、20人ほどの小さな大会だ。

蟲神器の公認大会=2025年5月18日、埼玉県三郷市

 だが、この大会のカードがいま、業界に風穴を開けようとしている。その名は「蟲神器(むしじんぎ)」。100円ショップ・ダイソー発の「100円トレカ」だ。

 2022年11月に発売されると、ダイソーがトレカ市場に本格参入したと話題になった。有名ユーチューバーも相次いで取り上げ、今や累計1千万セットを売り上げるヒット商品に育っている。

1人20枚で対戦

 蟲神器は虫がテーマの対戦型で、2人で遊ぶ。シャッフルしたデッキ(山札)から虫のカードなどを引く。それを使い、相手が「場」と呼ぶスペースに出している虫のカードを攻撃するなどして勝利を目指す。一見すると難しそうだが、実際に遊んでみると対戦は10分ほどで終わり、ルールもシンプルだ。

 遊ぶのに必要なカードは1人20枚。人気トレカの「ポケモンカードゲーム」(60枚)、「遊戯王OCGデュエルモンスターズ」(40~60枚)に比べて半数以下と少ない。

 価格も1パック5枚入りで税込み110円。一つ買えば、すぐに2人で遊べる入門用の50枚入り(説明書カードなどを含む)も同じ、同110円と破格だ。会社員の高橋一徳さん(45)は「(税別)100円なら、子どもに買ってと言われても一つならいいかなと思える」と話す。

蟲神器の入門用「スターターセット」(右下)と、5枚入り「ブースターパック」
キラキラとしたホログラム仕様の「スーパーレア」カード。蟲神器の5枚入りのパックを買うと必ず1枚入っている。さらに希少な「レジェンドレア」カードが入っていることもある

 そして、親子らを引きつける魅力はカードそのものにも。カードには実在する虫が描かれ、食べものに合わせて赤、青、緑の色で分けられている。例えば、赤の属性は肉食の虫で、緑の草食の虫に2倍のダメージを与えられる、といったルールがある。カードで虫の食性が学べるうえ、専門家が監修した解説文もあり、図鑑さながらの知識が得られるという。

 手軽さや学べる要素が差別化…

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