配偶者からの暴力(DV)に悩む男性への支援が、なかなか進まないのはなぜか。「男性学」を研究する伊藤公雄・京大名誉教授によると、かつて政府でも男性の相談体制が政策として進められていたが、いつの間にかトーンダウンしてしまったという。伊藤さんに、男性支援の難しさについて聞いた。
――トーンダウンしたとは、どういうことですか。
私は2010年に策定された第3次男女共同参画基本計画に携わりました。「男性・子ども」の分野に「男性相談」を目玉の一つとして盛り込み、これを受けて内閣府で「地方自治体等における男性に対する相談体制整備マニュアル」を作成しました。
ただ、「DV加害の男性が、妻の居所を調べるために相談する場合なども考えられるのでは」といった懸念の声が上がり、DVの部分は別冊というかたちになりました。
マニュアル自体、自治体において広く共有されたとは言いがたく、15年の第4次計画では「男性相談」は項目として消えてしまいました。せっかく政府もクローズアップし始めたのに、基本計画でトーンが弱まったのは、もったいないことでした。ただ、少なくとも80ほどの地方自治体で、男性相談の窓口が現在も稼働しています。
内閣府の「女性版骨太の方針」では、22年版以降、男性相談の拡充についての言及が見られました。25年に策定される第6次計画では、男性相談についての記述がどのようになされるのか、注目しています。
――男性のDV被害者支援の難しさはどこにあるのでしょう。
どこに行けば… 男性のDV被害者、見えない実態
やはり、自分が被害を受けて…