医療搬送用のヘリコプターが長崎県壱岐島沖で不時着水し、同県の対馬から福岡市内の病院に搬送中だった患者とその家族、医師の計3人が亡くなりました。離島における医療搬送用ヘリの役割とは。離島医療の現状と課題とは。これまで対馬を含む日本の59の離島に赴き、医療関係者や島民などに聞き取り調査をした京都府立医科大学大学院の木塚雅貴教授に話を聞きました。
――今回の事故をどう受け止めますか。
ドクターヘリや医療搬送用ヘリに関わるこれほど大きい事故はこれまで聞いたことがありません。衝撃を受けています。
北海道、東京、広島、長崎、沖縄……。日本には人が住む離島が南北に約400もあり、ヘリは不可欠な存在です。痛ましい事故ですが、こうした事故は厳しい医療環境を踏まえると、どこで起きてもおかしくないと言えると思います。
――離島の患者の搬送はどのように行われているのでしょうか。
本土や沖縄本島との距離や人口、自治体の体制によって状況は大きく異なりますが、離島にとって本土への足は漁船や高速船などの「海」か飛行機やヘリなどの「空」の2種類に限定されます。
ただ、一刻を争う場合は「空」しか選択肢がないのです。こうした中で、自治体が運用する「ドクターヘリ」が重要な役割を果たしてきました。状況によっては自衛隊や海上保安庁が搬送する場合もありますが、ヘリは患者の命を守る最後のとりでで、ヘリが無いと不安に感じる離島の方は多いと思います。
――そもそもドクターヘリと医療搬送用ヘリの違いは何ですか?
ドクターヘリは初期治療に必…