会計検査院の院長を19日付で退官した田中弥生氏(65)が朝日新聞のインタビューに応じた。経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーの教え子。民間での7回の転職を経て、2019年9月に検査官になり、24年1月から院長に就任した異色の経歴。任期中、補正予算と予備費の全体像を解明した。「検査院の報告書はどれも国民に深く関係する。関心を持ってくれることで政府が良くなります」と話す。
――記憶に残る仕事は何ですか。
戦後初めて、予備費と補正予算の全体像(執行状況)を明らかにしたことです。
政府はずっと、「予備費も補正予算も事業に使われる時は予算全体に『溶け込む』ので、予備費や補正予算だけを取り出して執行状況をみることはできない」と言い続けてきた。
ただ、コロナ予算では膨大な国費が使われた。検査院では、何とか実態を明らかにしたいと話し合ったが、財源のほとんどが補正予算や予備費。「溶け込む」がネックになりました。
――どうやってコロナ予算を解明したのですか。
現場の力です。動いたのが定年間際で現場一筋の課長さんです。課長の指示のもと、調査官らが各省を訪ね歩いた。ついに、各事業の担当レベルで、決算に提出する書類の他に、何にいくら使ったかを管理していることを発見したのです。これでコロナ予算がどう使われたのかが分かったのです。
――その後、予備費と補正予算の分析とはどうつながるのですか。
事業単位がポイントです。予算全体では「溶け込んで」分からないが、コロナ予算でわかったように、事業単位だと見えてくる。
再び動いた現場の課長たち
そこで、また課長らが現場力…