トランプ米政権が、ドル高の是正や貿易赤字の縮小を迫っています。主要国がドル高是正で一致した1985年のプラザ合意のように、トランプ氏の邸宅の名前を冠した「マール・ア・ラーゴ合意」が実現するとの見方もあります。しかし、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは、40年前との違いを三つ指摘し、「現実的には不可能」とみます。
記事のポイント
プラザ合意の当時といまでは、①為替の取引量が段違いに増え、政府・中央銀行がコントロールしにくい②世界的な協力体制が期待できない③日本経済が弱くなった--という大きな違いがあると言います。その上で、日本銀行の利上げ路線も焦点になると言及しました。
――マール・ア・ラーゴ合意とは何でしょうか。
「大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が昨年11月に出した論文で示されました。論文によると、主に4点あります。一つが為替相場のドル安誘導。次に米国債の超長期化、つまり米国債の安定的な消化です。さらに、安全保障と経済政策の連携、最後が関税の戦略的活用です。つまり、為替、債券、安全保障、通商政策の包括的なパッケージです」
「こうした要求に対し、各国は通常なら反論してネゴシエーション(交渉)を進めます。しかし、実際は関税と安全保障の傘を使った脅迫になっています。従来は別の話だった安全保障と経済を一緒くたにしている点が大きな特徴です」
当時は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だったが…
――ドル高是正、貿易赤字の解消を狙うという点で、プラザ合意と重なります。
「当時といまは多くの点で違い、プラザ合意の再現は現実的に不可能でしょう。国際決済銀行の調査をみると、例えば為替の取引量は、86年時点で1日あたり6千億ドル程度でした。2022年は1日あたり7兆5千億ドルと、10倍超に膨らんでいます。こうした中でプレーヤーも多様化しており、政府・中央銀行が介入して水準や方向感を変えるのは物理的に難しくなっています」
「2点目として、プラザ合意…