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検察側の論告を聞く須藤早貴被告=2024年11月18日、和歌山地裁、絵・岩崎絵里

 「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家、野崎幸助さん(当時77)に覚醒剤を摂取させて急性覚醒剤中毒で殺害したとして、殺人などの罪に問われた元妻の須藤早貴被告(28)の裁判員裁判が18日、和歌山地裁で開かれた。検察側は「莫大(ばくだい)な遺産を得るための計画性の高い犯行で、不合理な弁解に終始し反省もしていない」として、須藤被告に無期懲役を求刑した。

 野崎さんは2018年5月、和歌山県田辺市の自宅2階で死亡しているのが見つかった。

 須藤被告は今年9月の初公判で、野崎さんに致死量を超える覚醒剤を摂取させたとする起訴内容について全面的に否認した。18日午後には弁護側の最終弁論があり、その後、須藤被告が意見を述べて結審する見通し。判決は12月12日に言い渡される予定。

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 これまでの公判で検察側は、野崎さんが覚醒剤を摂取したと考えられる時間帯に、自宅には野崎さんと須藤被告しかいなかったと指摘。野崎さんから「離婚する」と言われた須藤被告が、莫大な遺産がもらえなくなることから覚醒剤を使った「完全犯罪」をたくらんだ、と主張した。

 さらに、野崎さんが経営していた会社の元従業員や、遺体を解剖した大学教授、覚醒剤の密売人とする男性ら計28人を証人として法廷に呼び、「犯人は須藤被告しかあり得ない」ことを立証しようとした。

 一方で、須藤被告が殺害したことを示す直接的な証拠は出ていない。今月8日の被告人質問で、弁護側に覚醒剤について問われた須藤被告は「(野崎さんに)買ってくるよう頼まれた」と供述。「自殺や(覚醒剤の)量を間違えた可能性もある」と述べ、死亡への自らの関与をあらためて否定した。

 また、弁護側は初公判での冒頭陳述で、疑わしいだけでは罪に問えない刑事裁判のルールを強調した。裁判員に対して「須藤被告が人を殺す量(の覚醒剤)を飲ませることができたのか」「野崎さんが自分の意思で飲むことは本当にあり得ないと判断できるまで、捜査が尽くされたのか」といった点について、検察側が裁判で立証できたかを判断してほしいと訴えていた。(河原田慎一、伊藤秀樹)

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