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 暑すぎた夏の影響で、秋の果物に異変が起きている。高齢化で作り手が減る生産現場をさらに苦しめ、栽培を敬遠する農家も出ている。

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 9月~10月に旬を迎えるナシの王様「新高(にいたか)」。甘みが強く、大きいものは1キロ以上となり、贈答用としても人気がある。千葉県の北西部にある白井市の橋本梨園では数十年にわたり栽培を続けてきたが、今年は9割以上を収穫できなかった。

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日焼けなどになり、収穫前に木から落とした新高=千葉県白井市、橋本哲弥さん提供

 全国の夏の平均気温は昨年と並び、統計史上最も高かった。記録的な猛暑の影響で、園では最近3年はまともに新高の収穫ができていない。「日焼け」で実が黒くなり、果肉が柔らかくなる「煮え果」が発生し、収穫前の実が樹上で腐ったり、地面に落ちたりした。

 代表の橋本哲弥さん(44)は「長い時間をかけて作っても努力が報われない。来年以降、新高の栽培を減らすと決心がついた」とつぶやいた。

日本ナシの栽培面積、生産は減少傾向

 農林水産省によると、国内の日本ナシの栽培面積(結果樹面積)は9820ヘクタール(2023年産)と、10年前と比べて約2割減少。収穫量も18万3400トンと3割以上減っている。栽培経営体も1万3768(20年)と10年と比べ、4割弱減。ナシを含む果樹農家の経営者のうち、65歳以上の割合は10年は約4割だったが、20年は7割に急増した。

 生産量の減少について、農水省の担当者は「高齢化による担い手の減少に温暖化などが追い打ちをかけている」と指摘する。新高に代表される春に開花し、秋に収穫する「晩生(おくて)品種」は高温障害が起きやすく、品種に限らず暖冬による開花の遅れや、発芽不良も各地で見られる。加えて、果実を吸い、傷をつける果樹カメムシによる被害も深刻だ。

 鳥取大の竹村圭弘准教授(園芸生産学)は「温暖化により、高温に強い品種への切り替えが必要な生産地も出てくるかも知れない」と指摘する。散水やチタンの袋で実を覆うなど暑さ対策はあるものの、記録的な猛暑が続けば、限界もある。

 大学では亜熱帯で栽培される台湾ナシと日本ナシを交配し、暑さに強い品種の開発にも取り組む。竹村准教授は「新しい木を植えてから収穫まで数年かかる。将来的にどれだけ気温が高くなるかを考慮して品種や栽培の適地を考えることが必要だ」と話す。

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ふるさと納税に関わるサービスを提供する「さとふる」が猛暑などの影響を受けた農家などの応援をするために開いたイベント。ナシも販売された=2024年9月、東京都墨田区

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