「ニューディール」を掲げて大統領に就任した当時のフランクリン・D・ルーズベルトの写真=2025年7月、米ニューヨーク州ハイドパークのFDR大統領図書館、江渕崇撮影

「100年をたどる旅~未来のための近現代史」日米編⑨

 自由を突き詰めた末、社会や経済が痛めつけられ、その反動で自由そのものが危機に瀕(ひん)する。

 およそ百年の時をはさみ、米国はそうした歴史を繰り返そうとしているかのようだ。

 マンハッタンの河口からハドソン川沿いを120キロほど上流へ。米国史上で唯一、大統領に4度選ばれたフランクリン・D・ルーズベルト(FDR)を記念する図書館兼博物館が、ニューヨーク州ハイドパークの丘陵にたたずむ。

 入館してすぐ「UNEMPLOYED」(失業)というネオン管の文字と、世界経済をどん底に陥れた大恐慌時の写真パネルが目に入る。

 スープの配給に列をなす人々。

 「なぜ僕の父さんには仕事がないの?」と書かれた板を手に立ち尽くす少年。

 皆が恐怖に身をすくめる中、「ニューディール」(新規まき直し)を掲げて1933年に第32代大統領に就いたのが、民主党のFDRだった。

 ダムなど大型公共事業による雇用創出がよく知られるが、それはニューディールの一部に過ぎない。

 「大恐慌からの脱却を図っただけではない。二度と同じことが起きないよう、FDRは米国の資本主義を丸ごとつくりかえようとしたのだ」。ニューディール研究の第一人者であるカリフォルニア大デービス校のエリック・ローチウェー卓越教授(歴史学)はそう解説する。

 銀行取り付け騒ぎが相次いだ金融危機への対応に、その精神がみられる。

もしニューディールが失敗していれば

 FDRは就任早々、全米の銀…

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