Smiley face
写真・図版
福馬智生さん

 人々の関心や注目が経済的な価値を持つ「アテンション・エコノミー」。ネット上で私たちは知らない間にその影響を受けることがあります。対策技術を開発する東大発AIベンチャー代表の福馬智生さんに取り組みを聞きました。

情報の海の全体像

 SNSなどインターネット上では、ユーザーの関心や注意を引くため、個人の嗜好(しこう)からおすすめされたコンテンツを視聴させるという形態が浸透しています。このため、偏ったものしか見られない、同じようなものばかり見て考えが偏る、といったことが起こり得ます。そうした環境で情報収集しようとしても、どんな論点や意見があり、どの程度それを把握できているのかを知るのは困難です。

 私は2016年にAIベンチャーを起業し、システム開発や偽情報対策などの研究をし、企業向けに提案しています。そのひとつが、ユーザーが多様な論点に触れられるツールの開発です。あるトピックについて、動画やSNSのコメントなど様々なソースから情報を集め、どのような論点があったかを可視化します。情報の海を見下ろしているイメージです。さらに、海を横から眺め、各論点がどれほど盛り上がったか、山の高さを測ります。一つの論点の山が突出して高ければ、みんなそればかり見ているという偏りがある状態です。ユーザーがこうした情報の全体像を知っていれば、また違った意思決定ができるのではないかと考えています。

 ただ、ここで集められるのは、ネット上で話している人たちの情報です。ネットの議論に参加しない「サイレントマジョリティー」と呼ばれる人たちの意見までは可視化できません。また、最初は多数あった論点も時間が経つと、どれかの論点に収束していきます。多様な論点が常にネット上に存在しているかといえば、そうとは言えない面もあります。

多様な意見を「生成」

 X(旧ツイッター)などのS…

共有