(21日、第97回選抜高校野球大会1回戦 エナジックスポーツ8―0至学館)
「ノーサイン野球」を掲げるエナジックスポーツ(沖縄)の選手たちは、攻撃中もベンチを見ない。選手たちが磨く洞察力と対応力が、先制点を生んだ。
二回無死一塁。カウント1―2から走者の富盛恭太がスタートした。打者の平良章伍はバントの構えからヒッティングに切り替えた。左前安打で好機を広げ、得点につなげた。
平良は「(一塁走者との)アイコンタクトで走るかもと思っていた。相手の動きも含めて、全体を見てどう打つか決めた」。視界の端で富盛のスタートを感じ取り、二塁ベースのカバーに向かう遊撃手の動きを見てヒットゾーンが広がった三遊間を狙った。
創部は2022年。浦添商と美里工を率いて甲子園に出場した神谷嘉宗監督が、強豪校と渡り合うために採り入れたのがノーサイン野球だ。
サイン自体、存在しない。打者は走者の目を見て狙いを推し量る。実戦練習を多く行い、プレーが食い違えば練習を止め、反省と改善策を探すミーティングをとことんやる。お互いの性格や野球の志向も分かるし、相手を観察する力もつく。
では、神谷監督は何をしているのか。「ボーッと見てます。なぜ監督が指揮するのが野球なの? 子どもたちが考えて、その瞬間瞬間で勝負していく。そっちのほうが楽しいと思うんですよ」
この日4安打2得点の活躍だったイーマン琉海は「自分たちで考えて野球ができると、野球が楽しい」とうれしそうだった。味方や相手を観察し、試合の状況など様々な要素を材料に自らの行動を決める。野球以外にも通ずる力で挙げた、甲子園初勝利だった。
- エナジック、左腕久高が4安打完封 七回猛攻で至学館を突き放す