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 事態は非常に深刻――。米国で運営されてきたショウジョウバエのデータベース(DB)が存続の危機にあり、財政支援を呼びかけている……。研究者の間で行方を懸念するメールが飛び交っている。

 このDBは「フライベース」。遺伝子名を入れると、それが体のどこで働き、どんな機能をもつか、これまで発表された論文のエッセンスもわかる。論文で使われたハエの入手先、最新の実験手法から求人まで、情報は盛りだくさんだ。

 在米の研究者は「毎日見ている。これなしの研究は考えられない」と話す。充実した内容は、キュレーターと呼ばれる研究者たちが支える。論文を読み、最新の情報に更新しているという。

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米ハーバード大が運営してきたハエのデータベース。支援を呼びかけている

 フライベースは、米国立衛生研究所(NIH)の補助金で、米ハーバード大が管理してきたが、トランプ政権が同大への補助金を凍結した影響が直撃した。

 キュレーターの雇用を続けられないとフライベースの質は維持できず、世界中の研究者が困る。寄付を募るなど解決策を探っているという。

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ショウジョウバエ=京都工芸繊維大の島袋順二技術職員撮影、都丸雅敏助教提供

 ショウジョウバエは、100年以上前から生命現象を解き明かす実験に使われ、時にノーベル賞受賞につながる成果を支えてきた。

 たとえば、自然免疫のスイッチを入れる重要な遺伝子はもともとハエで見つかった。体内時計と呼ばれる24時間のリズム「概日周期」を制御する仕組みもハエで見つかった。いずれもヒトを含む哺乳類にも共通する基本的な仕組みであることがわかり、研究が発展した。

 そもそも遺伝子が染色体上に…

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