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 豪雨による被害は起こり得るところばかりで起きている――洪水や土砂災害の犠牲者を長年調査をしてきた静岡大の牛山素行教授(災害情報学)は、こう指摘する。どんな場所が危ないのか。

  • 豪雨時は「流れる水に近づくな」 20年超の調査で見えた被害の実態

低地に危険「あふれない川はない」

 「ハザードマップを絶対視せず、あふれない川、崩れない山はないと思ってほしい」と牛山さんは言う。

 洪水で特に要注意なのが山あいの中小河川だ。普段は水が少なくても、一気に水量が増えて勢いを増す。堤防がないことも多く、あふれると川沿いの低地いっぱいに広がって家屋を巻き込む。

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能登半島豪雨で大きな被害を受けた塚田川流域。上流(奥)から押し寄せた水や土砂が、元の流路(左)を外れて低地いっぱいに広がったことがわかる=2024年9月25日午前6時2分、石川県輪島市久手川町、ドローンで撮影

 昨年の能登半島豪雨や2017年の九州北部豪雨でも、川に近い住宅が押し流された。一方で、少し高い場所にある建物は被害を免れていた。

 リスクが高いのは「川のへりと同じ高さにある低地」。川が洪水を繰り返しながら地形を造り続けている場所で、あふれればここを流れ下る。

 谷の出口の扇状地も、土石流が造った地形だ。がけや斜面は、いつかは崩れるので、近くにいては危ない。こうした場所が土砂災害警戒区域に指定されている。

 ただ、人家がない場所は区域指定の対象外だ。山間部の道路は、斜面や土石流の起こる渓流と隣り合わせ。豪雨時の通行は避けたほうがいい。

 平野部の大河川による浸水で家が流される例は少なく、上の階に逃げることも選択肢になる。ただ、堤防のそばでは破堤すると激しい水流になる。ハザードマップでは、家屋倒壊等氾濫(はんらん)想定区域として示されている。

 様々な想定は国土交通省ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)の「重ねるハザードマップ」で見ることができる。ハザードマップが未整備の中小河川も、地形分類を表示させると、低地などの特徴もつかめる。

 牛山さんは「ハザードマップは自分の家だけを細かく見るのではなく、周囲を含めて広く大雑把に見てほしい」と言う。色が塗られていなくても、地図上の線を境に一気に安全になるわけではないからだ。決められた条件のもとで計算した結果に過ぎず、土砂災害警戒区域のすぐ隣で被災したケースもある。

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牛山素行・静岡大教授=東京都千代田区

大雨のときは「キキクル」を

 危機が迫っているかどうか、豪雨時の状況把握は気象庁サイトの「キキクル(危険度分布)」(https://www.jma.go.jp/bosai/risk/別ウインドウで開きます)がおすすめという。洪水や土砂災害の危険度が刻々と変わる様子が地図上に色分け表示される。

 地域によって被害の出方が変わる降水量に比べて、避難の目安として使いやすい。

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「キキクル」で表示した能登半島豪雨時の河川の危険度。災害が発生していてもおかしくないレベル5相当の黒や、4相当の紫の川が目立つ=気象庁ウェブサイトから、2024年9月21日10時40分時点の情報

 赤ならレベル3(高齢者等避難)相当、紫ならレベル4(避難指示)相当で、危険が迫った状態だ。黒はレベル5(緊急安全確保)相当で、被害が出ていてもおかしくない状況になっている。

 能登の豪雨でも、被害発生の2~3時間前に紫が出ていたという。設定した地域の危険度が上がるとスマホに通知が来る民間サービスもある。

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気象庁「キキクル」の見方と警戒レベルの対照表

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