豪雨による被害は起こり得るところばかりで起きている――洪水や土砂災害の犠牲者を長年調査をしてきた静岡大の牛山素行教授(災害情報学)は、こう指摘する。どんな場所が危ないのか。
- 豪雨時は「流れる水に近づくな」 20年超の調査で見えた被害の実態
低地に危険「あふれない川はない」
「ハザードマップを絶対視せず、あふれない川、崩れない山はないと思ってほしい」と牛山さんは言う。
洪水で特に要注意なのが山あいの中小河川だ。普段は水が少なくても、一気に水量が増えて勢いを増す。堤防がないことも多く、あふれると川沿いの低地いっぱいに広がって家屋を巻き込む。
昨年の能登半島豪雨や2017年の九州北部豪雨でも、川に近い住宅が押し流された。一方で、少し高い場所にある建物は被害を免れていた。
リスクが高いのは「川のへりと同じ高さにある低地」。川が洪水を繰り返しながら地形を造り続けている場所で、あふれればここを流れ下る。
谷の出口の扇状地も、土石流が造った地形だ。がけや斜面は、いつかは崩れるので、近くにいては危ない。こうした場所が土砂災害警戒区域に指定されている。
ただ、人家がない場所は区域指定の対象外だ。山間部の道路は、斜面や土石流の起こる渓流と隣り合わせ。豪雨時の通行は避けたほうがいい。
平野部の大河川による浸水で家が流される例は少なく、上の階に逃げることも選択肢になる。ただ、堤防のそばでは破堤すると激しい水流になる。ハザードマップでは、家屋倒壊等氾濫(はんらん)想定区域として示されている。
様々な想定は国土交通省ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)の「重ねるハザードマップ」で見ることができる。ハザードマップが未整備の中小河川も、地形分類を表示させると、低地などの特徴もつかめる。
牛山さんは「ハザードマップは自分の家だけを細かく見るのではなく、周囲を含めて広く大雑把に見てほしい」と言う。色が塗られていなくても、地図上の線を境に一気に安全になるわけではないからだ。決められた条件のもとで計算した結果に過ぎず、土砂災害警戒区域のすぐ隣で被災したケースもある。
大雨のときは「キキクル」を
危機が迫っているかどうか、豪雨時の状況把握は気象庁サイトの「キキクル(危険度分布)」(https://www.jma.go.jp/bosai/risk/
地域によって被害の出方が変わる降水量に比べて、避難の目安として使いやすい。
赤ならレベル3(高齢者等避難)相当、紫ならレベル4(避難指示)相当で、危険が迫った状態だ。黒はレベル5(緊急安全確保)相当で、被害が出ていてもおかしくない状況になっている。
能登の豪雨でも、被害発生の2~3時間前に紫が出ていたという。設定した地域の危険度が上がるとスマホに通知が来る民間サービスもある。