イスラム組織ハマスは6日、殺害された最高幹部ハニヤ政治局長の後任に、パレスチナ自治区ガザの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏を選んだと発表した。イスラエルへの強硬姿勢で知られる同氏は昨年10月の奇襲を主導したとされ、イスラエルとの停戦交渉が停滞するとの見方も出ている。
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イスラエルのカッツ外相は6日、シンワル氏の選任について「彼を速やかに排除し、この悪質な組織を地球上から消し去るための説得力ある理由となる」とX(旧ツイッター)に投稿。ハマス壊滅に向けて攻撃を継続する方針を表明した。
カタールの衛星放送局アルジャジーラなどによると、シンワル氏は1962年、ガザ南部ハンユニスの難民キャンプに生まれた。大学在学中に反イスラエル運動に関わり、卒業後、今のハマス軍事部門の設立に貢献したとされる。
イスラエル軍に逮捕されて20年以上服役するなどした後、2017年からガザの最高指導者に。昨年10月にイスラエル軍との戦闘が始まった後もガザにとどまっているとされる。米政府から「特別指定国際テロリスト」に指定されているほか、今年5月にはイスラエルへの奇襲を指示したなどとして、国際刑事裁判所(ICC)の検察局がハニヤ氏らと共にシンワル氏の逮捕状を請求している。
イランの首都テヘランで7月末に殺害されたハニヤ氏はカタールを拠点に、ガザの停戦や人質解放の交渉にあたっていた。ハニヤ氏が対イスラエルで比較的穏健とみられてきたのに対し、シンワル氏は強硬とされ、イスラエル軍がガザでの戦闘を通じて殺害を狙い続けてきた。イスラエルに標的とされているシンワル氏が停戦交渉を担うことで、交渉がスムーズに進まなくなるとの見方もある。
一方、ハニヤ氏の殺害をめぐり、イスラム諸国で構成する「イスラム協力機構(OIC)」は7日午後(日本時間7日夜)、外相級の緊急会合をサウジアラビアで開く。イスラエルへの報復を宣言しているイランが開催を要請した。イランは参加国から報復への理解と支持を得た上で、イスラエルへの攻撃に踏み切りたい考えとみられる。
一方、米国のバイデン大統領は6日、エジプトのシーシ大統領、カタールのタミム首長と相次いで電話で協議した。中東での紛争拡大を防ぎたい米政府は連日、中東各国との外交努力を続けている。
ホワイトハウスによると、バイデン氏は両首脳との電話協議で、ガザでの即時停戦や人質解放の合意を含め、中東地域での緊張緩和に向けた取り組みについて話し合った。また、ブリンケン米国務長官は同日の記者会見で、ガザでの即時停戦や人質解放について「交渉は最終局面に入った」との認識を示した。
ハニヤ氏の死去を受けてハマスの最高幹部となるシンワル氏について、ブリンケン氏は「停戦の決定については、常に主要な決定権者だった。停戦は彼の決断にかかっている」とし、「いまは決定的な時だ。当事者たちが、まもなくゴールに達すると信じている」と呼びかけた。(佐藤達弥)