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ペンシルベニア州であった選挙イベントで話す民主党大統領候補のハリス氏(中央)とリズ・チェイニー氏(右手前)=2024年10月21日、ニューヨーク・タイムズ

Liz Cheney and Harris Make a Play for G.O.P. Women in ‘Blue Wall’ Suburbs

 ハリス副大統領は10月21日、郊外の共和党支持層の女性にアピールするために総力を挙げた。三つの重要な激戦州にある大都市で、富裕層[well-to-do]が暮らす郊外でイベントをおこない、保守系に訴えかけるアンバサダーには、ワイオミング州選出の元下院議員、リズ・チェイニー氏を起用した(訳注:ブッシュ〈子〉政権の副大統領を務めたディック・チェイニー氏の娘。共和党員だがトランプ氏には批判的で、2021年の連邦議会襲撃事件を調査する下院特別委員会に参加し、トランプ氏弾劾〈だんがい〉にも賛成した。22年の中間選挙では、その報復としてトランプ氏が立てた候補に予備選で敗れた)。

 デトロイト、ミルウォーキー、フィラデルフィア郊外のこぢんまりとしたシアターの聴衆を前に、ハリス氏とチェイニー氏は一緒に演説をし、トランプ前大統領に対する共同戦線を張った。共和党員がなぜハリス氏に投票すべきなのか、という明確な根拠を示したのはチェイニー氏のほうだった。

 チェイニー氏は妊娠中絶の権利[abortion rights]や国家安全保障・外交政策について、トランプ氏は無責任で危険な人物だと評した一方、ハリス氏については国の安定を維持し、女性の健康を守る、より安全で合理的な選択肢だと述べた。

党派ではなくて善悪の問題

 「これは党派の問題ではなく、善悪の問題だ」と、チェイニー氏はミシガン州ロイヤルオークの聴衆に語りかけた。会場となった劇場は、過去の大統領選で(共和党の上院議員)ミット・ロムニー氏のイベントが開かれた場所だ。「確かに『人前では話せない』と言う共和党員もたくさんいる。彼らは暴力を含むあらゆることを案じているが、正しい選択をすることだろう。みなさんも、もし少しでも心配があるならば、自分の良心に従って投票し、誰にも何も言う必要はないということをお忘れなく」

 ハリス陣営は郊外の保守系女性への浸透を重視しており、選挙終盤になっても投票先を決めていない、カギを握る層だと見ている。チェイニー氏は、共和党員が民主党候補に投票することを理由付け、心理的に「正当化する構図[permission structure]」(訳注:オバマ元大統領が記者会見で使って広まった言葉)を構築しようとしたのだ。

 保守系の女性たちの多くは、社会や外交の問題でハリス氏よりもはるかにチェイニー氏寄りの候補者に何年も投票し続けてきた。チェイニー氏がハリス氏支持をニュースにしようとし、ハリス氏は選挙戦の論点の繰り返しに徹したのはそのためだ。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

大統領選が終盤を迎えるなか、ハリス氏は保守系女性を取り込もうとしています。カギとなる激戦州の郊外を共和党元下院議員と行脚する様子を、NYT記者が追いました。

 チェイニー氏は、ウィスコン…

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