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 香川と岡山の島などを舞台とした3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が開かれている。8月31日までの夏会期には、今回から新たに引田エリア(香川県東かがわ市)と志度・津田エリア(同さぬき市)が加わった。瀬戸内の文化や暮らし、景観などに刺激を受けて制作された独創的な作品を紹介する。

やさしい美術プロジェクト「{つながりの家}カフェ・シヨル」

 取っ手の大きな、ごつごつとしたコーヒーカップ。瀬戸内海の離島、大島(高松市)の土で作られたものだ。「入所者の人からのアドバイスで取っ手を大きくしたんです」。「やさしい美術プロジェクト」のディレクターを務める愛知県立芸術大教授の高橋伸行さんはそう語った。

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新たに作られた「大島焼」のカップ。取っ手は入所者の声を受けて大きくした=2025年7月31日午前9時44分、高松市庵治町、渡辺杏果撮影

 国立ハンセン病療養所「大島青松園」のある大島。島内では、ハンセン病の後遺症で視力が低下した入所者のために、スピーカーからオルゴールの音楽が流れ、道の真ん中には白線が引かれている。白線に沿って歩いた先に、カフェの入る社会交流会館がある。

 プロジェクトが手がけた「{つながりの家}カフェ・シヨル」は2010年の瀬戸芸初回から続いている。コンセプトは「大島を味わう」。島の土を使った焼き物「大島焼」の食器を用いて、島で取れた野菜などを提供する。

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新たに作られた「大島焼」の小皿=2025年7月31日午前9時44分、高松市庵治町、渡辺杏果撮影

 今回の夏会期に合わせて、カップやカフェボウルなど50点ほどの大島焼を大学生らと新たに制作した。菓子を置く小皿は、青松園の入所者と制作したもので、それぞれ風合いが異なる。

 高橋さんは飲食を通して「島の全てを味わい尽くして欲しい」と話している。

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{つながりの家}カフェ・シヨル=2025年7月31日午前9時45分、高松市庵治町、渡辺杏果撮影

大島(高松市)【アクセスと営業時間】

 高松港から大島まで船で30分。カフェは午前11時から午後3時まで土日祝日のみ営業。

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大島から瀬戸内海を眺める=2025年7月31日午前11時4分、高松市庵治町、渡辺杏果撮影

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