「ちわーっす。温泉を愛しすぎて湯船と同棲(どうせい)している若旦那です」

 インスタグラムの動画に、湯船につかりながら軽いのりで登場すると、自虐ネタも含めながら福井の魅力を発信。「越前そば、ソースカツ丼、ひっで(ものすごく)うめえ」と方言も交え、語りかける。

 SNS上で活躍する「福井のすごい若旦那」さんの総フォロワーはユーチューブやインスタグラムなどで計9万5千、動画の総再生回数は3千万回を超える。雪のかたまりを頭や肩に載せ、雪道で「君とここで、お昼寝したいなあ」「福井に来たら、いいと思う」と訴えかける動画はインスタグラムで202万回再生された。動画の最後は「福井に来て喧騒(けんそう)を忘れて、スマイル・ウィズ・ミー(一緒に笑おう)」と、ぎこちないウィンクを繰り返す。

 本名は山口高澄さん(37)。地元あわら市で旅館「グランディア芳泉」の経営に携わりながら、県内の魅力を発信している。「勝手に福井県代表、やらせてもらってます」。

 動画を見てもらえるかどうかはインパクト勝負と考えている。「攻めるところは攻めないと」。ほかの人気動画を参考にアイデアを練る。ただ、動画に近所の名所や飲食店の紹介をしのばせることも忘れない。

 旅館は祖父の代から続き、やがては跡取りとみられていた。敷かれたレールの上を歩いているような人生に窮屈さを感じ、かつては反発もあった。だが、東京での大学生活と大手旅行会社での金沢勤務を経験し、あわらの豊かな自然の魅力に気づかされ、25歳で故郷に戻った。

 SNSを本格的に始めたきっかけは、コロナ禍の苦境だった。

 2024年に北陸新幹線の敦…

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