きっかけは、ビギナーズラックだった。
東京都在住のタクシー運転手、久村泰平さん(37)は、大学に入学してすぐ、高校時代の先輩に誘われて初めてパチスロをした。3千円が数時間で5万円になった。
「お金って、こんなに簡単に稼げるのか」
気付いたら授業もバイトも行かなくなり、毎日パチンコ店に通っていた。
最初は、定期代、教科書代だと親にうそをつき、お金をだまし取った。そのうち親の財布やタンスから金や貴金属を盗み出して、ギャンブルにつぎ込んだ。消費者金融からは限度額いっぱいまで借り、ヤミ金にも手を出した。
入社後は会社の金に手を付け、9年目で懲戒解雇された。妻と離婚し、2人の子供とも別れた。
パチスロをしても楽しくなかった。「早く取り返さなければ」という焦りだけ。ギャンブルでつくった借金はギャンブルで返す。それ以外のことは考えられなかった。
2年あまりの寮生活、「完治した」と思い込み
約600万円に膨らんだ借金…