7月の参院選をめぐり、自民党公認候補への投票の見返りに報酬の支払いを従業員に約束したとして、パチンコ店運営会社社長ら幹部6人が公職選挙法違反(買収約束)容疑で逮捕された事件で、幹部らが「残業代」として報酬を支払う予定だった疑いがあることが捜査関係者への取材でわかった。警視庁と7県警の合同捜査本部は、残業代として渡すことで投票の見返りであることを隠す目的があったとみている。
捜査本部によると、パチンコ店運営会社は1都7県で31店舗を展開する「デルパラ」(東京都港区)。同社社長の山本昌範(本名・李昌範)容疑者(50)=韓国籍=ら幹部6人は各店舗の店長らと共謀して7月、パチンコ業界初の組織内候補として比例区に出た阿部恭久氏(66)に投票する見返りに、従業員らに現金3千~4千円を渡すことを約束した疑いがある。いずれの認否も明らかにしていない。
8月に支払い予定か
捜査関係者によると、同社従業員の残業代の時給は1500~2千円。幹部らは阿部氏に投票した従業員に対し、1人当たり2時間残業したとして、8月に3千~4千円支払う予定だったという。同社幹部らの指示を受けた各店長は従業員に投票を呼びかけたうえで、阿部氏の名前を書いた投票用紙を写真撮影させるなどして状況を把握していたとされる。
警察の捜査が入り、報酬を実際に受け取った従業員は確認されていない。
阿部氏「非常に残念」
捜査本部は、各店長の呼びかけに応じて従業員ら約250人が実際に投票した可能性があるとみている。こうした従業員についても、捜査本部は、買収に応じたとして公選法違反の疑いがあるとみて任意で調べを進める方針だ。
阿部氏は27日朝、自宅インターホン越しに取材に応じ、「選挙違反がないようにしていた。どうして起こったかわからないが、非常に残念」と話した。