【連載】フランスのリアル 麻薬危機編 第1回

「ようこそコカイン地帯へ」と書かれた抗議の横断幕を掲げるパリ北東部ローザパークス地区の住民ら=2024年12月10日、宋光祐撮影

【連載】フランスのリアル 麻薬危機編

 フランスが麻薬に揺れています。密売は都市部から地方に広がり、市民が抗争の巻き添えになる事件も起きました。貧困や移民差別ともつながる麻薬犯罪は、政治を変えつつあります。麻薬の蔓延が生む危機は社会に何をもたらすのか。足を運んだ現場には、華やかなパリからは見えないもう一つのフランスがありました。

 イルミネーションがきらめき、フランスが最も華やぐクリスマスを控えた昨年12月10日夜。パリ北東部の19区にあるローザパークス地区では、住民たちが麻薬犯罪の現場視察に訪れたヌニェス警視総監とパリ市の幹部に怒号を浴びせていた。

 「警察や行政は死人が出ないと何もしてくれないのか」「街をうろつく密売人や中毒者を今すぐどうにかしろ」

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 ローザパークス地区は2015年の鉄道駅の新設に合わせて整備されたパリの中でも新しい地区だ。交通の便がよく、住宅価格も比較的安いため、パリでの暮らしを希望する子育て世代の家族などが移り住んできた。街ができてから10年。地区では麻薬の密売が横行するようになった。

パリで2024年7月19日、五輪の開幕を前に警備区域で活動する警察官ら=ロイター

 パリ五輪の競技会場が近いことから、大会が開催された昨夏は警察官が増員され、麻薬の密売人や中毒者は姿を消した。パリ市も五輪をきっかけに警察と協力して地区の治安改善を目指した。しかし、五輪が閉幕すると密売人は戻ってきた。なぜ治安は改善されないままなのか。

 「ようこそコカイン地帯へ」…

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