今月上旬、2025年秋冬シーズンのパリ・ファッションウィーク(PFW)が開催された。今季は、大手ファッショングループ傘下の人気ブランドでデザイナーの交代劇が相次ぐ中、「己を知る」作り手やブランドの存在が際立っていた。
大手ブランドが、数年ごとにデザイナーを交代させる狙いは、顧客層の若返りや拡大だ。1990年代に巨大資本が老舗のブランドを次々に傘下に収めて以降、そうした動きは加速している。
コムデギャルソンが掲げたテーマは「SMALLER IS STRONGER(小さきものほど強いのだ)」。ファッション界の現状に対する反骨精神、更に視野を広げれば大国の論理で世界情勢が動きそうなことへの異議申し立てとも取れるメッセージだ。あえて身体に合わせないシルエット、布を袋状にする縫製などは、50年を超えるブランドの歴史で川久保玲がこれまでも好んできた手法。そうした「小さな」積み重ねで、これまでにない服を仕立てる試みだ。バックステージで川久保は「ビジネスもファッションもカルチャーも、今は何でも大きいものがいいという風潮があるが、小さくても大事なこと、強い要素は存在する」と語った。
ザ・ロウのショーでは、靴を履いたモデルが1人も登場しなかった。そして、何人かのモデルはストールのようにタイツを首にかけていた。こう表現すると奇抜な装いのようだが、間近でみると高級感がある。タイツもアウターもカシミヤなど上質な素材。このブランドならではの提案だ。
サンローランは「装飾などではなく生地や構造で個性を際立たせる」という1960年代初頭の創業当時の精神を尊重して物づくりを続ける。今回、目を引いたのは後半に続々と登場したボリュームのあるスカート。大きなリボン、レザーのブルゾンとのスタイリングには迫力があった。
ロエベはJWアンダーソンの最終シーズンに
モノトーンを中心にシャープ…