パレスチナ自治区ガザ市で2025年7月22日、イスラエル軍の攻撃で破壊された家のがれきの中にいる子どもたち=ロイター

 イスラエル軍による攻撃や物資搬入の制限によりパレスチナ自治区ガザの人道状況が悪化する中、フランスのマクロン大統領が9月の国連総会でパレスチナの国家承認を表明すると発表した。フランスの狙いや今後の焦点などについて、慶応大の錦田愛子教授(中東政治)に聞いた。

  • フランスがパレスチナ国家承認へ 9月国連総会で、マクロン氏が表明

 フランスのマクロン大統領がパレスチナを国家承認する意向を表明した背景には、パレスチナ自治区ガザの停戦交渉が後退する中で、米国やイスラエルに対話の圧力をかける狙いがある。米トランプ政権のウィトコフ中東担当特使が24日、「(イスラム組織ハマスは)合意への意欲を欠いている」と主張し、停戦協議の中断を発表したばかりだった。

 ただ国家として正式に国連に加盟するには安全保障理事会で認められる必要がある。イスラエルを支持する米国には常任理事国として拒否権があり、実現する可能性は極めて低い。フランスの国家承認には象徴的な意味はあっても、実質的な効果はない。

国家承認は「片道切符」の外交カード」

 すでに約150カ国がパレスチナを国家承認しているが、フランスが承認すれば主要7カ国(G7)では初となる。今後の焦点は、他のG7の国に同調の動きが広がるかだ。しがらみが多い英国やドイツは難しく、可能性があるとすればカナダやイタリアだろう。

 もし国家承認が大きなうねりになれば、米国とイスラエルの孤立が深まり、潮目が変わる可能性はある。ただ国家承認は一度しか使えない「片道切符」の外交カードだ。どの国も慎重にならざるをえず、先の展開は読めない。G7の一角を占める日本も現政権の基盤が不安定な中で、米国の意向に反した動きはとれないのではないか。

共有
Exit mobile version