耕作放棄地の再利用をめざしてクラフトビールの醸造所を立ち上げた鴨志田隼輔さん=2025年8月13日、茨城県常陸太田市、古庄暢撮影

 茨城県常陸太田市の金砂郷(かなさごう)地区を流れる久慈川沿いを車で走ると、風に稲穂が揺れる田園に囲まれた、1軒の醸造所が見えてくる。

 今年4月に開業したクラフトビールを製造する「カナサゴ・ブルワリー」だ。

 約380坪の敷地に入ると、景石や松とともに、レモングラスやローズマリー、スペアミントなどが植えられた庭園が出迎えてくれる。

 「ビールの原料に使うハーブを植えていて、来てくれた人にビールを味わうだけでなく、風景や庭園の香りも楽しんでもらいたい」と、オーナーの鴨志田隼輔さん(35)は語る。

英国の大学院に留学、造園学も学んだ

 同地区の出身で、祖父の代から続く地元発祥の造園会社の跡取り。

 高齢化で耕作放棄地が増え、廃れつつある地元の田園風景を「少しでも以前の姿に取り戻したい」。実家の家業を手伝いながら醸造所を始めたきっかけだった。

 水戸市内の高校を卒業後、東京農大に進学。イギリスの大学院に留学もし、造園学を学んだ。

 帰国後は、都内の造園会社や不動産開発会社、建設関連会社などを渡り歩き、住宅販売の営業やイベント会場の空間づくりにも携わった。

 転機は5年前、30歳の時だった。

 コロナ禍の影響で、東京五輪の開催が1年先延ばしになり、勤め先で請け負っていた五輪関係のパビリオン整備の仕事が中断した。テレワークが中心になり、県内に生活の拠点を移した。

ふるさとで目にしたものは…

 帰省した故郷で目に留まった…

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