船旅を通じて平和な社会の実現を目指す非営利の国際交流NGOピースボートが、昨年のノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の洋上特別展を始める。ノルウェー・オスロの博物館「ノーベル平和センター」での展示を同館学芸員が再構成し、寄港先の若者らに被爆の実相を伝える。
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ピースボートは約3カ月間の世界一周旅行を年3回実施している。1回あたり日本やアジアを中心とした約1800人が船に乗り、寄港先の国々での観光に加え、貧困問題や戦争被害、歴史認識問題などを学べ、船上セミナーにも参加できる。
2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGOの連合体「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」の運営団体でもあり、被爆者が乗船して各国で証言をする活動もしてきた。
今回の洋上展は、「A Message to Humanity」(世界人類へのメッセージ)と題して、今月23日に日本を出発する客船から常設する。約70平方メートルの一室に、原爆投下直後に廃虚となった被爆地の写真や、被爆者による絵、被団協メンバーたちのポートレートなどを展示。米国、フランス、中国など18カ国に寄港し、現地の学生や、市民団体、国連関係者らを洋上展に招待する予定だ。数人の被爆者も乗船して証言活動を行う。
同名の展示は、平和賞関連の展示を毎年行うノーベル平和センターで昨年12月から公開されている。ピースボートの提案を受け、センター学芸員が船内向けに再構成。担当者によると、「核兵器の悲惨さとともに、被爆者たちの力強さとしなやかさ、未来への希望を表している」という。
企画したピースボート共同代表の吉岡達也さん(64)は、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を示唆していることなどを挙げ、「核戦争に限りなく近づいている今だからこそ、世界中で被爆の実相を見てもらいたい」と話す。洋上展は少なくとも3年続けるという。